故三上次男氏が、内陸の「絹の道」シルクロードに対して、海上の「陶磁の道」の研究を提唱してから、半世紀になろうとしています。この「陶磁の道」は、三上次男氏の研究の歩みであるのと同時に、その後の陶磁器研究者の指針ともなり、今も多くの研究者が陶磁器を通じた交易の歴史を追っています。
今展示では、三上登美子夫人より青山学院大学に寄贈された貴重な陶片資料の一部を展示します。西アジア、東南アジアなど世界各地や、有田や瀬戸など日本で集められた陶片の物語る、東西交流の歴史と文化の世界をお楽しみください。
二十世紀後半の研究成果をまとめ、二十一世紀の研究を展望する記念事業として、東洋陶磁史出版を計画した。東洋陶磁学会の総力を挙げて、この三十年間に話題を呼んだいくつかの成果や、研究で明らかになった中国、日本、朝鮮、東南アジア、そしてイスラームの陶磁器を取り上げることとした。その内容も煮詰められ、いよいよ刊行の運びとなった。 近三十年の東洋陶磁史研究の到達点をまとめようとする出版であり、ここから現在の研究水準を汲み取ることはもちろんであるが、今後の新たな研究を確かなものとする拠り所としても活用されることを望みたい。